中国中央電視台制作の連続TVドラマ「三国演義」。1990年から4年間かけて撮影され、1994年に放映されました。国内の賞を総ナメにした人気ドラマだったそうです。一話が約46分、全84話。黄巾の乱から始まって司馬炎が帝位につくまで、原作の「演義」にかなり忠実にドラマ化されています。
見どころ、といったらどこもかしこも見どころだらけなんですが、中でもわたしが特にお薦めしたいところをピックアップしてみます。

大迫力の戦闘シーン

戦闘シーンの迫力はかなりのもので、スタントは相当危ないことしてます。日本ではこんなこと絶対できない(許可されないし、監督もやらせない)ようなシーンが続出、ほんとにこれ誰も死んでないの? ほんとに? とたずねたくなるほどでした(*1)。ハリウッド映画でも、こういうタイプの(生々しい)迫力は味わえないと思います。特に「赤壁」の火攻めのシーンはとてつもなく広い範囲を、お金かけて作り上げた豪華セットごとバンバン燃やしてて、すごく見ごたえがありました。

諸葛孔明の三大バカシーン

わたしは三国志ではダントツで孔明先生(コンミンシェンシャンって読んでね)のファンですし、ドラマで孔明先生を演じた唐国強さんのファンでもあります。ので、孔明先生の出るシーンは全部見どころなんですが、中でも見逃せないのは「三大バカシーン」と名づけた、以下の3場面です。
風ごいの踊り・或いは黒ミサ
赤壁の戦いの火計のために東南風を呼ぶと称して、山の上の祭壇で孔明先生が執り行ったミョーな儀式。
周瑜の葬式
周瑜が死んだのは諸葛亮のせいだ、と言って呉の武将達が殺そうといきまいている中、孔明先生はわざと弔問に行って大泣き&大演説して全員を感動させて帰ってきた。画面で確認したところ最初に感動したのはやっぱり魯粛、武将の中では黄蓋でした。
お手製南蛮猛獣
南征の時、猛獣を使う敵に対抗するために孔明先生が突然どこからか出してきた発明品。

三国演義は「劇団・樹座」か!? (*2)

最初に気が付いたのは袁紹が美青年風からオジサンの俳優に替わった時でした。「えっ、いつのまにそんなに時がたったの?」と驚きました。だけどどう考えてもそんなにたってるはずがないのです。でもまあ、若い俳優から年配にバトンタッチすることは日本でもよくあるので、その時はそれで納得しました。

同じ頃、袁術が、いかにもセコそうな顔つきの人から別のセコそうな顔つきの人に替わりました。今度は同世代ですから時の流れは関係ありません。この時は「病気か事故で代役を立てたのかな?」と思いました。

次に劉備の奥さんの甘夫人が熟女から若い人に変わりました。ここでやっと「変だな」と思いました。

そのあたりから怒濤の役者交代が始まりました。張コウが痩せ、張遼は若返り、ホウ統は縮み、ギョロ目だった魏延は小さな目に。程c、曹洪、曹仁、賈ク、許楮、黄忠、他にもたくさんの登場人物の顔が次々に変わっていきました。魯粛・孫乾・関平あたりはそれぞれ3人ずつ役者がいたし、趙雲もA→B→A→C(つまり一度元に戻った)で計3人。諸葛瑾なんかよく覚えてないけど4人くらいいたんじゃないでしょうか。

ある日突然知らない人が出てきて、顔の横に「趙雲」とか「魏延」とか名前が表示される時の驚き。特に前任者が気に入ってた時はショックで、画面に向かって思わず「おまえは違う!」と叫んでしまったりするのですが、いくら叫んでもドラマの方は「おお、あの長坂坡で敵陣を一騎で駆け抜けた趙雲殿ですか」かなんかで進んで行っちゃうので、むりにでも納得しないと先に進めないのです。(*3)

探してみよう、一人二役

逆に、1人の俳優が2つの役を演じるケースも目に付きました。孫堅と孫権が同じ役者なのは「親子だから顔が似てる」ってことでそんなに違和感なかったんですが、最初の頃に袁紹をやってた人が次出てきた時には周瑜になってたのには驚きました。これ、日本で言えば「ひとつの大河ドラマの中で、今川義元と明智光秀を同じ俳優がやる」みたいなものですからね〜。

ほかに気づいた一人二役は、李儒(菫卓の参謀)と楊脩(「鶏肋」で有名な魏の文官)、紀霊(袁術の武将)と黄忠(蜀の老将軍)、師キョク(魏の楽師)とケ芝(蜀の文官)、南蛮のトウトナと天水の太守。これ以外で気がついた人がいたら、教えてください。それにしても層が厚いのか薄いのか、謎だな〜中国の芸能界。(*4)

ダラダラ走るエキストラ兵士

個人差はあるし、シーンによっても違うんだけど、全体にエキストラは脱力してます。叫び声は「わー」とか「おー」の力のない棒読み。腕の上げ方や走り方はそこらで借りてきた中学生のようにチンタラ。激戦中あるいは負けて退却してる最中にニヤニヤ笑う。きわめつけは顔を上げてまわりを見る死体。なんでこれで監督OKが出るのかよくわかりません〜。

夜と朝で声が変わる子供

声は、基本的に全部アフレコのようです。ずれてるところが多いとか、そんなことはしばらく見てれば気にならなくなるのですが、孔明先生の有名なエピソード「十万本の矢」の回で、船の中で接待と伝令役をやっていた13歳くらいの少年の声が、夜のうちは大人の声だったのに、一夜明けたら子供の声に変わっていました。別々の回でのことなら、役者さんのスケジュールが合わなかったのかなとか思えるんですが(それでも相当ヘンだと思うが)、同じ回で声が変わるっていうのは一体どういう事情によるものなのか、いくら考えてもわかりません。ちなみに石井明(字はAQ)先生は「どっちの声も本人の声じゃない」と断言してました。

ゴミ

空を写すカメラのレンズによくゴミがついてました。ぜんぜん違う時期なのに、同じ場所についてたりしたので、使いまわし(もしくは撮りだめ)だなーと思いました。レンズはちゃんと拭きましょう。


(*1)でもよく考えてみると「誰も死んでない」とは誰も言ってないですね。…。
(*2)劇団・樹座は、遠藤周作さんが主宰していた超素人劇団。ひとつの役に役者が何人もついて、交代に出てくる。
(*3)その後のチェックで、魏延も張コウも司馬懿も3人いたことが判明しました。主役級以外で長く出ている役はほとんどどれも役者交替してますが、なぜか呉の張昭だけはずーっと同じ人でした。ヒマだったのか?(←失敬な)
(*4)その後のチェックで、一人目の太史慈と二人目(三人目かも)の廖化も同じ人だったことが判明しました。孫策と一騎打ちする太史慈に、関羽の危機に援軍を求めに走る廖化、どっちもおいしいとこを演じてます。