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クルマの話 1999.3.23(火)

 すっかりサポート日記をサボってしまった。何と前回は昨年7月22日だから9カ月近いインターバルを置いてしまったわけだ。しかし決してその間もサポート業務を怠っていたわけではない。コンピュータの面倒もちゃんと見続けている。Elfin号はその後Windows98にアップグレードし、テレビチューナを追加したり、と色々やっていることはやっている。昨年の青山円形劇場の12日間の時にも内助の功はあったはずだ。だがしかし、こういったことは定例業務の一環として行われているわけで、毎回毎回そう新味のあることが起きるわけではない。それを繰り返し書くばかりでは読んで面白くもなかろうし、またそうした内容の日記が延々続くことで、ワガママ娘が私をコキ使っているかの如くの誤解が、ヒロコさんに対して生じることを私は大変恐れていたのである。

 以上がサポート日記怠慢の言い訳である。ところが当のヒロコさんより、「別にここには、サポート以外でも好きな事を書いてくれればいいよ」との提言があったので、これからは好きなことを書かせて頂こうと思う。そこで今回はリニューアル第一弾として、サポート業務について書くことにしよう(笑)。

 何を思ったか最近ヒロコさんは早寝早起きに挑戦している。しかし基本的にこの人は完全な夜型人間以外の何者でもない。従って単なる悪あがきに終わり、私は早晩沈没するに違いないと思っていたのだが、早くもそうなったようだ。
 …まあそれはともかく、パーフェクトに夜行性であるということは、買い物をするにも、食事をするにも色々不都合が生じるわけであり、当家には各業界深夜営業マップが準備されている程である。そして結局一番困るのは交通機関が使えないということだ。これはつまり車で移動するしかない。ところがヒロコさんは車の免許を持っていない。
 かくして、実のところヒロコさんに対する私のサポート業務の中で、日常的に最も大きな割合を占めるのは「アシ」の問題なのである。幸い私も完璧な夜型である。深夜のファミレス通い、夜間開業書店への行き帰り、レンタルビデオショップへの往復等々、私はお抱えドライバーとして極めて重要な役割を担っているのであった。

 ところで私は昔レーサーを志望したくらいの走り屋である。そして実際にレーサーにならなかった分、発散されていないものが溜まっているらしく、本物のレーサーのように「街乗りの車はカローラでいいや」という様な枯れた心境には到底至っていない。だから車選びは非常にうるさい。ピッタリ来る車がなければ、どんなにポンコツになっても買い換えずに乗り続けるという性分なのである。

 つい最近まで当家の車は先代のブルーバード(U13)SSSリミテッド・アテーサであった。実はこれが相当ポンコツになり、2年も前から車の買い換えを考えていたのである。しかし全然買いたい車が現れず、今日まで騙し騙し乗り続けてきていた。
 しかし去年も押し迫る頃になると、長年の激走に疲れ、シャーシのヘタリは覆い隠すすべもなく、ジオメトリーを調整しても直ぐに狂い出すし、ボディのやつれから接着部分が剥がれたり、ウインカーがポロッと落ちるなどという言語道断の事態が起きるまでになった。それでも車内にアロンアルファを常備しつつ乗り続けていたが、最早これまでという状態を迎えていた。
 欲しい車はない。しかし愛車U13ブルは末期症状を呈しておりどうにもならない。そこで不本意ながら選択基準を甘くして、買い換えを真剣に検討しなければならないところまで追い込まれてしまったのである。

 私の車の好みからいえば、走りの大味なビッグサルーンや、ラグジュアリーセダンや、ワゴンや、RVや、SUVは問題外。しかしNSXやRX7などのスポーツカーも嫌い。走りに特化したその姿は、トランスポーテーションの道具としての機能と実用性を失っており、私の求める車の概念の中には元々ない。シルビアやZやスープラなどのスポーツ・スペシャリティも中途半端でイヤだ。車はあくまでもセダンが基本である。それも走り味に優れる、適度なサイズのスポーツセダンでなければならない。その代わり駆動方式は何でもよい。良くできたFF、FR、4WDの走りはそれぞれに面白い。元レーサー志望はそんなことにはこだわらないのである。
 そして最後に一番難しい条件がある。ヒロコさんを乗せる車であるということだ。そういうことになると、バカッ速だがお下劣な車などは完全にダメだ。乗る人間の知性と品格に合った車のデザインと雰囲気を考慮しなければならない。当然車の選択は難渋を極めることになる。

 愛車U13ブルーバードSSSは妙なボディデザインのためか、日本では大変な不人気車であり、色が黒であったためもあって、一部ディープなヒロコファンの方々には「ゴキブリ号」との称号を頂いていたようである。しかしそのデザインは乗ってみて初めて分かる合理性があり、物欲し気な虚飾が全くない品の良い車であった。また典型的なハイパワー・フルタイム4WD車であっても、外観を見ただけでは安い普通のブルーバードと殆ど変わらぬさり気なさにも非常に好感が持てた。実際、購入時にはR32スカイラインGT-Rにも大いに食指を動かされていたのではあるが、張り出したブリスターフェンダーにいかにも品性の無さを感じてどうしても買うことができなかったのである。だから8年前はU13ブルのマッチョなスポーツバージョンに決めたのであった。

 その前に乗っていた車もブルーバード(U12)で、ラリーベース車となったハイパワー・フルタイム4WDのSSSアテーサ・リミテッドであった。これは歴代ブルーバードの中で最高の傑作車で、ボディデザインも非常に美しかった。だからU13ブルに乗り換えずに、長く乗っていこうと思っていたのだが、ある日千葉県内の峠道を走行中の私に、同じ時期にラリーでU12ブルの好ライバルであったギャランVR-4を操る見知らぬ若僧が、身の程をわきまえぬバトルを挑んできた結果、激闘の末ハイスピード・コーナリング中に彼の運転未熟によって側面から激突され、両車切り通しの壁にクラッシュし、あえなく廃車となってしまったのは大いに悔やまれることではあった。

 さてその前の車もブルーバードで、これも名車の誉れ高いFR最後の910ブルーバードSSSターボであった。そしてその前は………キリがないのでもう止めにするが、要するに私は紛う方なき日産ファンであるということだ。だから今回もどうしても日産車から選びたい。それもブルーバードクラスの5ナンバーサイズの引き締まったボディの車が良い。
 しかし現行のU14ブルーバードにはハイパワー車の設定が無くなり、家電のような車に落ちぶれてしまったし、プリメーラも先代の様なシャープなハンドリングを失い、結局中身はU14ブルと同じで全然欲しくならない。そこでスカイラインのモデルチェンジには大いに期待していたのであるが、R34スカイラインはあっと驚くデザインセンスで登場した。走りは極上のフィールで満点に近かったので捨て難く、目隠しして乗ることまで考えた。しかしこの車のデザインセンスとヒロコさんという存在を整合させる理論をどうしても見つけることができず、結局断念せざるを得なかった。

 実際今日産には私の欲しい車が皆無なのである。それに日産もダイムラーを断るようでは最早完全にダメだ。一方仇敵余裕のトヨタには買っても良いと思う車が幾つかある。設計思想的に走り屋魂に多少反する所があるものの、チェイサー・ツアラーVは良い。走りはR34スカイラインほどではないが、最近軟弱化傾向にあるBMWなどはすでに超えている。
 またガラッと違う観点からプリウスも大変良い。これは走りなどという次元を超えて新鮮だ。私は電車マニアでもあったことだし、これでもまあいいか(笑)。アルテッツァは久々のコンパクトFRスポーツセダン。走りもまあ良い。しかしあの全身から発する安手な雰囲気に私はついて行けない。アリストは猛烈に走ることは走るが、コンセプトがエグ過ぎる。一体何なのあれは…おっと、トヨタ車にケチを付けるのが目的ではなかった。とにかくトヨタには確かに適度に良い車が沢山ある。しかし惚れ込む程のものはない。そして一番大きな問題は、真性日産ファンにとって、トヨタ車に乗り替えるというのは悪魔に魂を売り飛ばす以上の抵抗感があるものなのである。

 他のメーカーに目を転じると、ホンダには正統派スポーツセダンがない。三菱のランエボは異次元の走りで惹かれるものがないことはないが、いくら何でもあの外観。その好ライバルのスバル・インプレッサWRXはもっと好きだが、街乗りにはトルクの出方がピーキーに過ぎる。根性を入れて走りたい時だけ乗るなら良いが…。

 ああ、どうしても国産車はダメだ。外車にしよう。ヒロコさんの乗るに相応しい車という観点からデザイン中心に選ぶと、アメ車は論外。ドイツ車は車は良いのにデザインに色気がなく今一つ魅力に欠ける。やはりイタ車かフランス車か。
 人気のアルファ156は確かに良い。スタイル良し、スポーティ感覚良し。しかしアルファロメオの昔を知る者にとって、フィアットのアルファではアルファであってアルファではない。私が納得できずにこれはダメ。次はシトロエン・エグザンティア。デザイン的には非常に気に入った。走りにも独特の味がある。しかし少なくとも走り屋には全然向かない。これも私がダメ。そしてプジョー406。これも本当にスタイルが奇麗なセダンだ。デザインは完全に合格。走りはどうか。フランス車にしてはV6 3リットルの方はパワーもそこそこあり、ハンドリングも普通になって、私もどうにか納得できるレベルにある。ヒロコさんも気に入った。もうこれにしようか。すっかりその気になり、買う気で仕様を決め始めた。ところが日本に入ってくるプジョー406は色が6色しか選べない。ヒロコさんがどの色も今ひとつ気に入らない。で、結局これもダメ。北欧系もなんだかんだで全部ダメ。最後はヒロコさんが「ジャガーXJ6の丸目四灯ヘッドライトの旧バージョンが好き。でなければミニがカワイイ」などと言い出す。ああやっぱり英国好きのヒロコさん、すでに我々は半ばヤケクソ気味になっていた。

N氏とB4 そんな時、ひっそりと登場した地味な車があった。そう、大ヒットしているワゴンの陰で存在感ゼロにも等しい、スバル・レガシィの正統派スポーツセダンB4である。カー雑誌で見たデザインは、フロントマスクを除き、Cピラーからテールエンドに至るカーブなど、とってもユーロピアンで二人とも気に入った。サイズもコンパクトに5ナンバー枠に納まっている。少し厚めのスタイルの全般的な印象はU13ブルにも通じるものがある。こういうボクシーかつマッシブなデザインは、カラーがダークなら私とっても好きです。更にフルタイム・スポーツ4WDといえば30年来のスバルのオハコ。RS、RSKと二つしかないバリエーションのうち、私が選ぶのは当然シーケンシャル・ツインターボエンジン搭載のRSKである。
 早速試乗してみれば、低速トルクたっぷりで、高回転域のトルクの出方も尋常ではない。それでいて、超ハイパワーにもかかわらず、非常にしなやかで大人の走り。ポルシェチューンの脚まわりは固いが弾性に富み、ストロークも長くてとてもいい感じだ。水平対向エンジンの重心がセンター寄りで慣性モーメントが小さいせいか、あるいは前後輪の可変トルク配分のせいなのか、4WDなのに本当に良く曲がり、リアの滑り出しがフロントの引っ張りに移って収束するまでの挙動も極めて自然。更に気に入ったのはブレーキで、踏みしろと効き方のリニアリティは絶品である。ああ中島飛行機スバルさんは、車好きの心が良く分かっていらっしゃる。本当に驚いた。これは世界に誇れる極めて完成度の高い車だ。少し真面目過ぎる感じもするが…。

 加うるに小さなことだが、オプションで選べるマッキントッシュ・オーディオが良い。「マッキントッシュ」といえば今やおしゃれパソコンの代名詞だが、我々の世代にとってはやはりビスケットかハイファイ・オーディオのブランド以外ではあり得ない(因みにオーディオメーカーの方は「Macintosh」ではなくて「McIntosh」ね)。オーディオマニアであった私は「マッキン」(そう、決して「マック」ではない)のアンプの、あのブラックガラスの奥に浮かぶイルミネーションと、深海ブルーのメーターのパネルデザインにはあこがれ続けたものだ。このカーオーディオのデザインがまさにこのマッキンデザインなのだ。これはオプションとして選択しないわけにはいかない。聴いてみると、本格オーディオ風味の音がする。音の出方がとにかく高級ハイファイ的なのだ。これは最早カーステレオの音の品位ではない。これにはヒロコさんが大喜び。車内で宇多田ヒカルを掛けまくる毎日である。私も負けずにSMAPを聴く。逆にラジカセサウンドのCDはとても聴いてはいられない。

 そんなこんなで、これはもうこれしかなく即座にレガシィB4 RSKに決定である。富士重工の車なら、日産ファンである自分自身の気持ちの整理もできるし。私は大根・人参を買うように「これください」状態で購入したのであった。
 そして早速ヒロコさんが例によって例の如く、新しい車に愛称をつけてくれた。「レギィ」ですと(^_^;)…。


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