やれ嬉しや、しまうま
日差し浴びて、懐かしき広野に遊べば
やあ、やあ、と、友が寄ってくる
おいしい水を、持ってくる
「裸足のきみを僕が知ってる」
王府の闇の迷宮に
謎の男が住むという
心の歪みを矯すとやら
鬱なら来いと言っている
いつでも来いと謳ってる「夜の一品」
蝋燭の光、揺れて
銀器に私の男が映る
厨房の秘密、恍惚の hors-d'oeuvre
新しい天体が踊る「きみが壊れた」
二年前、僕たちはノルウェイの家具を買って
外の世界からの、お互いの外壁からの隔離を
つかのまの幸せな隔離を楽しんだ「月が誘う」
わたくしは39歳である
青春は終わった、と言え
それでは、いつ言えばいいのだろう
死ぬ前に「しまうま」
輸出するな、輸入もな
関税をかけるなよ
わしを売るな、わしを買うな
船便で送るんじゃない「ねこ曜日」
ねこ曜日は、カレンダーには、ない
ねこ曜日は、その気になれば、
ひとことの先にある、ひとときだ。
さあ、その気になってくれ「空のオカリナ」
うるさい子供が、うちの近所にいた
ある日、その声が聞こえなくなった
どこへ行ったのか、わからないけれど
ふと、あの声が聞こえてくるような気がする
どんな子だったんだろうと思う「ハーブガーデン」
風邪を引いているの
惹いているのか
弾いているのでは
曳いているつもりは
風邪が退いているの
挽いているのか
碾いているような
轢いているわけでは「鳥籠姫」
その男がどこから来たのか
誰もわかりはしないのだが
そいつは砂浜に勝手に穴を掘って
自分を埋葬してしまった
何年か経って、その女がやってきた
どこから来たのか、その女は
男の墓に花を飾って
自分も埋葬してしまった「はじまりの丘」
はじまりは、おわり
おわりは永遠のはじまり
はじまりの丘に立っているのは
馬鹿だけれど、
ただひとりの馬鹿だけれど、
待っているのだやれ楽しや、しまうま
日暮れて、懐かしき森に戻れば
よお、よお、と、友が寄ってくる
おいしい酒を、持ってくる