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「ナルニア国物語」の「馬と少年」…カロールメン王国のその後問題

And after the old Tisroc's death when Rabadash became Tisroc in his place he turned out the most peaceable Tisroc Calormen had ever known.
This was because, not daring to go more than ten miles from Tashbaan, he could never go on a war himself; and he didn't want his Tarkaans to win fame in the wars at his expense, for that is the way Tisrocs get overthrown.
(C.S.Lewis "The Chronicles of Narnia - The Horse and his Boy")

そして、ティスロックの死後、ラバダシがそのあとを継いでティスロック王となってからは、カロールメンではいまだかつてない平和ずきな王としてすごしました。どうしてかといえば、タシバーンから十五キロ以上遠くにいく勇気はなかったので、みずから戦争に出ることができなかったからです。それに、王は、じぶんの部下のタルカーンたちが、じぶんをさしおいて、戦争でてがらをたてることを好みませんでした。こうしてティスロック王朝は破滅していったのです。
(「馬と少年」岩波少年文庫)

太字の部分が問題のところです。「for that is the way Tisrocs get overthrown」と現在形になってるのを見ても、文脈からいっても、またわたしの願望からいっても(^^;)、「それに、王は、じぶんの部下のタルカーンたちが、じぶんをさしおいて、戦争でてがらをたてることを好みませんでした」のあとは、「王朝がこうして破滅した」ではなく「ティスロックたちは(一般に)そういうことがきっかけで王座を(家臣に)奪われるものだから」が正しい意味だと思います。つまり王朝も国も特に滅びたわけではない…少なくとも滅びたとは書いてないわけです。よかった〜(^_^)

それから、わたしは「Tisroc」は王を表す異国風の普通名詞扱いの言葉だと思っていたので(「ミカド」とか「ショーグン」みたいな)、「ティスロック王朝」と王朝の名前に使うことに違和感を感じて「ティスロック王朝(たぶんカロールメンのこと)」などと書いてしまったのですが、これはほんとはよくわかりません。もし詳しくご存知の方がいたら、ぜひ教えてくださいね。(99.4.13)


上の件について、スウェーデンの研究所に滞在中の村上 斉さんからメールいただきました。
こちらに来ているイギリスの人(リバプール大学の数学の先生)に聞いたところ,谷山さんの考えが正解です.また,『Tisroc』も谷山さんのご推察の通り『king』や『emperor』が大文字で始まることがあるのと同じように,普通名詞から来ているのだと言ってました.だから,やっぱり『ティスロック王朝』というのはおかしいことになります(日本語にするときはしょうがないとは思いますが)
ということでした。正解でしたヽ(^o^)ノ おかげでますますやる気がわいてきました。がんばって読破するぞ〜。
ちなみにわたしは、このナルニア国物語の瀬田貞二さんの翻訳はスバラシイと思ってます。固い言葉(抽象的な漢字熟語など)をできるだけ避けて、やわらかい言い回しに徹していて、それがきれいで自然な日本語になっていて、翻訳でこういうふうにするのは大変な技術とセンスがいるんだろうな〜と、高く見上げる思いで読んでます。ですから決してケアレスミスを見つけ出して得意がってるわけではないので石ぶつけないでくださいね、瀬田ファンの方 (^^;)
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